2009年08月11日

須賀しのぶ 『芙蓉千里』

わたしは大陸一の女郎になる!
喉が痛い。それなのに叫ぶことをやめられない。今ここで黙っていたら、自分はきっと呑みこまれてしまう。あいつに引きずられてしまうだろう。全てを犠牲にして誕生する、巨大な太陽。燃え上がるスンガリー。大河は海へと注ぎ、日本へと導く。もう捨てたあの国へ。ならばいっそ燃やせばいい。この水を炎に変えて、海をも燃やし、あの島国を消してしまえ。全部なくなれ。そうすれば、もう誰も迷いはしない。
芙蓉千里
須賀 しのぶ
角川書店 ( 2009-07-01 )
ISBN: 9784048739658
おすすめ度:アマゾンおすすめ度


吉原の花魁だったという顔も知らぬ母親への憧れと、幼く強い夢を胸に自ら人買いに買われて満州・ハルピンに渡った少女・フミ
ロシア・中国・日本・・・多様な人種と国のまじりあう地で、フミは人生の一歩を踏み出す。


自分で自分を人買いに売りつけ、女郎を目指してハルピンまでやってきた少女・フミの人生を描いた「大河少女小説」です。
正直コバルト以外で書かれた今までの須賀さんの作品は個人的にはいまひとつだったので、今回もちょっと心配していたのですが、杞憂でした。すっごく面白かったです。

父親に捨てられるまで辻芸人として習い覚えた舞を人生の礎に、力強く生きていくフミの姿は、読んでいて気持ちよかったです。
とはいえ舞台はなんといっても女郎屋、苦界と言われる世界です。その醜さや地獄と呼ばれる様を不自然に覆い隠すでなく描きながら、そこで生きながら前に進む彼女の生き様を見事に思い浮かばせてくれる。お話の中にすっと入りこんでいける感覚がありました。
その苦界で、それぞれに生き、堕ち、抜け出していく女郎たちの姿や、ともにハルピンまで売られてきたタエとの友情も魅力的。タエはねー、生きる世界が世界だけに、いつその暗闇に落ち込んで牙をむくようになるのかと戦々恐々としながら読み進めていく感がありました。でも思いのほか強くしなやかな女性に成長してくれた。このふたりはホント共にいたからこそ、自分を失わずにいられたという二人だと思う。この友情がこの先も壊れずに続くことを願います。
それからフミの人生に大きく関わってきた二人の男性ですが、こちらの展開も必見。あえて言うなら黒谷の方が好きです。

まだまだまだまだ続きがありそうなお話。いやこれで完結されたら泣きますよ、真剣に。
「続きをよこせー!」というのが、最後のページを閉じた時の感想ですから。
実際に秋から第二部の連載が始まるそうですが、そうするとそれが刊行されるのはいつですか? 一年後くらい? うーん、辛い・・・。
タグ:須賀しのぶ
posted by 高 at 11:58| Comment(0) | TrackBack(1) | 邦人 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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vol.32「 芙蓉千里 」須賀しのぶ
Excerpt: 自ら人買いに自身を売り込み、「大陸一の遊女になる」と意気ごむ主人公・フミ。 辛い境遇をものともせずに逆境に立ち向かう彼女はおっとこまえです。 自分の運命は...
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