2009年02月08日

小川一水 『時砂の王』

「我々すべて、滅びる時間枝に属するすべての並行人類の希望を託して、君たちに命じる。伝えろ、勝て。さらばだ」
時砂の王
小川 一水
早川書房 ( 2007-10 )
ISBN: 9784150309046
おすすめ度:アマゾンおすすめ度


謎の増殖型戦闘機械によって滅びに瀕していた26世紀の人類は、最後の希望を託して、人型の人工知的生命体―メッセンジャーたちを過去に向けて送り出した。自分たちの属する世界の人類はいずれ滅びる。ならばせめて改変された過去からつながる時間軸(つまりパラレルワールド)では、人類が生き延びられるように。
そして数多の戦いを経てきたメッセンジャー・オーヴィルは、西暦248年の邪馬台国―人類防衛の最終ラインに降り立ち、時の巫王・卑弥呼とともに戦うが・・・


ずっと気になっていた本でしたが、図書館で借りて読んでみました。
面白かった!
いやー、小川一水さんて面白そうなのに手を着けずにいた作家さんたちの一人(そう、他にも沢山いる・・・)なんですが、ホント面白いですね。他のも読もう!

人類存続のために生み出され、戻れない旅へ送り出されるメッセンジャーたちは、それぞれの戦いの理由をそれぞれに見つけて旅立ちます。オーヴィルは共に過ごした人間の女性サヤカとの記憶と、彼女から受け継いだ「人に忠実であれ」という価値観を。
とはいえ過去に遡って繰り広げられる戦いは困難を極め、遡行に次ぐ遡行、戦いに次ぐ戦いを経る内に仲間のメッセンジャーたちも数を減らし、26世紀から持ってきた思い出も膨大な時間の彼方に薄れていき、それでも戦いつづけるオーヴィルの想いには、ただただ引き込まれるばかり。
そして、そこにさしはさまれる形で語られる3世紀日本での卑弥呼とオーヴィルの物語もまた同じくらいの勢いでぐいぐい展開していき、もう目が離せません。
戦闘が激化していく中で敗色が濃くなり、絶望の一歩手前まで行っても決して諦めない。その姿勢が生み出した未来と、けれど一抹の割り切れない哀しさに、忘れられないお話になりました。

この壮大な物語が、文庫でたったの300ページにおさまっているというのも驚異的です。過剰でも不足でもなく、しっかりと語りきられているその手腕にも拍手。

「私はカッティ・サーク(裾破れの娘)、惑乱の魔女。馬の尾をかざし、最短最速で勝利へ導く。利用できるあらゆるものを利用します。時の風はすべてを吹き散らし、時の砂はすべてを埋め尽くす。誰よりもそれらに身をさらしてきたのがOという男です。もしも、彼を支えられる女がいるのならば、私はそうさせるでしょう。そんな女は、十万年の間に一人もいませんでしたけれど」
ラベル:小川一水
posted by 高 at 22:30| Comment(4) | TrackBack(0) | 邦人 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
高さん、こんばんは。
高さんのレビュー見て、『時砂の王』読みました!!
300ページでも物足りないくらいで、もっとオーヴィルの話が読みたかったです。
時間SFが大好きなので、うはうはで読みました。
しかし……せつな過ぎる。
遡行につぐ遡行で、疲弊し、絶望的な戦いでぼろぼろになっていく彼らを見ていて、ぐっと胸が詰まりました。
この本にめぐり合わせてくれた高さんに感謝です。
そうそう。
後で、この記事をトラックバックさせていただきたいのですがよろしいですか?
なにぶんやり方がわからないので、時間がかかると思いますが……(苦笑)
Posted by たま at 2009年02月14日 23:03
おおー、たまさんもお読みになったのですね。こちらのお勧めで読んでもらえたりすると、なんだか嬉しいです。
終わり方が本当に切ないんですよね。数限りない戦いを経てきたオーヴィルのことを思うと、もっと幸せにしてやりたかったとか、最期に彼はどんな思いだったのだろうとか、いろいろ考えてしまいました。でもやっぱり、あの終わり方以上にいい終わり方もなかったんだろうなとも思うし・・・。
お話の舞台は日本だったから、ほとんど地名しか出てこなかったけれど中国やアフリカなど他の土地でも同じように戦っていたメッセンジャー達がいたわけで、そちらの人たちの物語も、あれば読んでみたかったです。

トラックバックはいつでも大歓迎ですよ。
なぜか時々はね付けられているのか受信されないことがあるのですが、うまく行きますように!
Posted by 高 at 2009年02月15日 00:37
こんにちは。
たまです。
TBの件、お手数おかけしました
ありがとうございました。
Posted by たま at 2009年02月16日 12:21
いえいえ、なぜか受信できなくて、こちらこそすみません。
何かのきっかけで受信できることもあるかもしれないので、これに懲りずに、また何か機会があればTBしてみてもらえると嬉しいです(^−^)
Posted by 高 at 2009年02月16日 17:26
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