2008年07月26日

沢村凛 『黄金の王 白銀の王』

この血に恥じぬよう生きること。事切れる間際まで
「先祖を尊ぶことを否定しているのではない。どなたも皆、穡大王の血を引く畏き方々だ。しかし......」
穭はふたたび薫衣に首を向け、視線を正面からとらえた。
「このままでは翠は滅びる。父祖のことばに逆らってでも、鳳穐と旺廈との争いを、終わりにしなければならないのだ」

黄金の王 白銀の王
沢村 凛
幻冬舎 ( 2007-10 )
ISBN: 9784344013988
おすすめ度:アマゾンおすすめ度


何代にもわたって玉座を奪い奪われ、そのなかで互いに憎悪を育んできた鳳穐(ほうしゅう)旺廈(おうか)の一族。けれどそうして国力を衰退させている間に、海の向こうには巨大な統一国家が成立しつつあった。
そのことに危惧を抱いた、現在玉座にある鳳穐の統領・穭(ひづち)と、追われる身にある旺廈の統領・薫衣(くのえ)は、自らが治める一族とという国を守り導き育むため、「互いの一族を滅ぼせ、皆殺しにしろ」という父祖の悲願に背き、この争いを終わらせるという苦渋の選択を取る。
敵の一族に囚われの身となった王と、混乱する国を統べる王。ふたりの選んだ道は、想像以上に困難なものだった...!


百数十年以上にわたって互いに争ってきた一族です。その間互いの身内を無残に殺され、その血肉に「相手を殺したい」という衝動を刻み込んできた一族の統領ふたり。
ここで重要な役割を果たすのは、迪学( じゃくがく)という教えです。これはおそらく昔の中国で言う儒教のような位置づけなのでしょうが、ひとつ違うのは、宗教・道徳の教えというよりは、人をみちびく者としての心構え、それに伴う必要な知識や体術も含めた実学だという点です。その教えの根幹は、なすべきことをなすこと、自らの集団を統べ、守り、育むこと、自らの血に恥じぬよう生きること。
この教えに従い、自らの中の衝動を抑え、父祖の教えに背く苦しみに耐え、誰からも認められない生き方を選択したふたりの生き様は、圧巻でした。
人の想いや生き様を変えること、変わることの困難さと、それを成し遂げる様子が丁寧に描かれています。
読んでよかった。おすすめです。

蛇足ながら、ちょっと気になったこと。
物語は、様々な登場人物の視点から語られているのですが、時々後世から歴史を俯瞰したような語りが入ります。歴史物語的側面を持っているお話ですから、それ自体はいい。ただその境界が曖昧で、ある人物の視点から語られていたと思ったら、そこに突然後世からの視点での語りが入ってくるので、一瞬没頭していた気持がしらけてしまうことがありました。
まあ面白さを損なうほどではなかったのですけれどね。
ラベル:沢村凛
posted by 高 at 10:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 邦人 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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