2005年10月28日

五條瑛 『夢の中の魚』

<鉱物>シリーズ番外編
「君の還る海は、故郷の海じゃない。もっと広い海だ。僕がいる海だ」
夢の中の魚 (双葉文庫)
五條 瑛
双葉社 ( 2005-10 )
ISBN: 9784575510362


在日新聞記者という仕事を隠れ蓑に、情報を集める韓国国家情報部のスパイ・洪敏成−暗号名「東京姫」。
祖国のために異国に骨を埋める覚悟をし、目的のためなら手段を選ばぬ彼が、相棒に選んだのは在日三世のパクだった。何事にも執着を見せない寡黙な男・パクを仲間に引き入れるため、また新たな海である日本での足場を確保するために、洪は日夜網を広げ続ける。


<鉱物>シリーズに脇役として登場する洪が主役のお話です。
小柄な身体と幼い顔立ち、人当たりの良さを武器に、あらゆる手を使って情報を手にする洪。彼には祖国のためなら何をもいとわない、という確固たる信念があって、実際に身近に居られたら嫌だろうなと思いつつ、けれどこの徹底ぶりは、いっそ潔いほど。
連作短編集で、9話に共通する日韓漁業協定の行方を追うという大枠の中で、一話一話では、その時々に洪が狙う情報や、情報網になる駒を育てるための動きを描いています。
それと同時に、いかに洪がパクを手の内に誘い込むかというお話にもなっていて、これはなんとも見事。誘惑しているといってもいい位かも。なんといっても、上に引用したようなセリフを抜け抜けと言ってのけるくらいですから。

タイトルにもなっている「魚」は、漁業協定の魚であり、東京という情報の海で泳ぐ洪やパクのことでもあり、それ以外の人間たちのことでもあります。
五條さんの他の作品と一緒で、読み進めるにつれて段々お話の中に引き込まれていき、最後は満足して表紙を閉じました。
こうなると同じく<鉱物>シリーズの番外編である『君の夢はもう見ない』も読みたい。早く文庫落ちしないかなぁ...。ああ、でもそれより<鉱物>本編の続きが読みたいかも。
タグ:五條瑛
posted by 高 at 23:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 邦人 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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