2004年12月12日

森博嗣 『愛蔵版 四季』

「悲しくはありません。ただ、そこには、自分だけが存在している、という意識。誰にも伝わらない、という思いがある」
四季
森 博嗣
講談社 ( 2004-03 )
ISBN: 9784062123310
おすすめ度:アマゾンおすすめ度


S&Mシリーズで非常に重要な役割を果たす天才・真賀田四季の生を綴った『四季』シリーズを一冊にまとめた愛蔵版です。

卓越しすぎた頭脳のために世界から乖離する一方不自由な拘束も受けていた四季は、14歳で両親を殺害して出産、29歳でその娘も殺して(?)失踪する。
その後『有限と微小のパン』で再び姿を現し、『四季 夏』でもかいま現れた。
そしてその後―― 現実世界から遊離し、それでも生を手放さず思考をめぐらせる四季と、そこに添う其志雄。
四季が為した行為はどのような結果を結んだのか? 四季が影響した人間たちは? そして四季の真実とは―― ?


『四季 春』『四季 夏』それぞれの感想は既に書いてあるので、ここでは主に『冬』の感想を。
難しかった...  今度こそ本当に、ついていくのが困難な時が何度かありました。
時代も場所も定かでない場所を思考だけで点々と跳んでいく。様々な過去の経験が再生され、後の出来事も描かれ、その内こちらはこれが過去の再生なのか「現在」なのかも分からなくなってくる。そこにまた挿入される四季の思考のランダムさと飛躍。もう???になりそうでした。
それでもG・Aのエピソードや、久慈の告白、犀川との邂逅、などを支点として読み進めることができたし、そうして読んでいくとやっぱりこの独特の世界観は嫌いじゃないなぁ、と思うわけです(『冬』に到ってはついていけない部分も多くあれど ^^;)
そしてここまで孤独な存在である四季が、それでも生を手放さずにいるのは、人間が好きだから、なのでしょう、きっと。その終わり方に少しほっとしました。

以下ネタばれ
『冬』の最後で「その百年が過ぎた」 と書かれています。 冷凍(?)睡眠や様々なテクノロジィを使ってその百年を駆け抜けた四季ですが、その彼女を取り巻く世界がどのような変貌を遂げているのかは定かではありません。
現在よりは医学や通信その他のテクノロジィが進歩しているということは伺えるのですが、そもそも物語中で語られる幾つかのエピソードが、その「百年後」なのか、それともそこに到るまでのどこかの時点での経験を再生したものなのかが判然としないのですから。
でもひとつだけ、下に引用もしてある犀川との会話。これだけはいつなのかを知りたい。興味があります。
百年後まで生きているとも思えないから、何十年か後とも考えられるのですが、テクノロジィの進歩いかんによっては百年後というのもありかなとも思うし...気になります。
「人間がお好きですか?」犀川は尋ねた。
四季は口元を緩ませ、そして微笑んだ。
「ええ......」
彼の姿を見る。
彼の思考を見る。
それは綺麗だった。
「綺麗だから」
ラベル:森博嗣
posted by 高 at 15:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 邦人 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。