2004年11月20日

五條瑛 『スリー・アゲーツ 三つの瑪瑙』

春花よ、どうか幸福に――強く切ない親の思い
葉山は少年を見つめた。少年は真っ直ぐに葉山を見上げていた。
葉山はくり返した。
「これだけは忘れないでくれ。君は父親に愛された。必要とされた息子だ」



北朝鮮である母子が命を賭けての亡命を決行しようとしている頃、ソウルでの銃撃事件を逃れて日本へ潜入した北朝鮮の大物工作員・チョンは、大量の偽ドル札を各所にばらまき始めた。
そのチョンを巡って、韓国、米国それぞれの情報部が動き始める。
米国情報機関の末端に位置する情報分析官・葉山は、チョンがソウルに残した文書からある事実を見出す。
チョンの握る謎とは、そして彼が日本で目指すものとは...?


今回のテーマは、ずばり"家族"でしょうか。
家長を信じ娘の未来を守るために我が身をはる母親の姿、正体も行方も知れない夫であり父親である人物を信じようとする家族の姿、自分を信じて待つ家族のためにすべてを投げ打とうとする父親の姿、すべてが胸を打ち、もう冒頭から涙が出そうでした。
ただ残念だったのは、そこを少し狙いすぎたのかなぁという感もあったこと。第一作目の『プラチナ・ビーズ』は特に何がどうという目玉はなかったかもしれないけれど、その分次から次へと展開されていく様々なエピソードにぐんぐん引き込まれました。
でも本作ではそこまでの吸引力はなかったかもしれない。テーマがはっきり打ち出されすぎて、ちょっと"うーん...?"という印象も受けました。それでもしっかりそこにはめられて感動していられたので、結局のところは私にとって面白い、いい作品でした。
狙いのようなものがそのまま読者に伝わってしまうのは少し引くけれども、それでも読者の心情をそこに持っていけるというのは、やはり著者の力量だと思う。早く続きが出ないかな。
以下ネタばれ
結局母親も(母親が死ぬシーンは涙涙でした)父親も失い、ひとりで亡命した春花は、その後どんな風に生きていくのでしょう。日本の家族の息子・勇気には母親もいるし、葉山も何かれとなく構いそうだけど、春花は本当にひとりきりになってしまったんですよね。
できれば、葉山が受け取ったチョンの赤い石は、勇気にではなく春花に渡って欲しいと思いました。←
ラベル:五條瑛
posted by 高 at 14:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 邦人 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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